ログ分析→ユーザーインタビューの流れで、「本当に解くべき課題」を明確にする

ユーザーリサーチ

定量データ(ログ分析等)と定性データ(ユーザーインタビュー等)の組み合わせは、プロダクト戦略や改善における強力な武器。
ただ、「組み合わせる」といっても、浅い使い方ではインサイトも浅くなりがち。
本記事では、実際のプロダクト開発現場で蓄積されたノウハウや研究で語られるエビデンスを交えながら、定性 x 定量で“深い学び”を得るためのポイントを解説します。

「定量から“なぜ”は分からない、定性はスケールしない」というジレンマを乗り越ることを一緒に目指しましょう!


定量×定性の意義を再確認する

まずは、なぜ私たちはログ分析とインタビューを組み合わせる必要があるのかを改めて振り返ります。それぞれの主要なメリットは以下。

  • 定量データ:「どのくらい」「どこで」「いつ」などの数値を把握。スケールの大きい母数をベースにするので再現性が高い。
  • 定性データ:「なぜ」「何を考えていたのか」「背景に何があるのか」を深掘り。理由や動機を生々しく知ることができる。

これらを統合し、課題やアイデアを「数字で語れる優先度 × 理由の説得力 × ユーザーの感情や文脈」の観点で総合評価できるのが定量×定性アプローチの真骨頂。
実際、「複数のデータソースを組み合わせて成果を上げる企業ほどROIが高い」という報告は数多くあり、たとえばMcKinseyによるデータ活用企業の調査でも、複合的なデータ活用(行動ログ+顧客インタビュー+市場調査など)を行う企業ほど製品成功率が上がる傾向が示唆されています(これは直感的にも理解しやすいですよね)。


まず定量で当たりをつける

ログ分析というとGAなどのダッシュボードを眺め、「セッション数」「コンバージョン率」をチェックするだけで終わりがち。しかし、本当に“インタビューと合わせて使う”段階に進もうとするなら、以下の視点でさらにデータを掘り下げてみてください。

セグメンテーション:ユーザーの複数軸切り

新規・既存、あるいはオンボーディングをクリアしたかどうかといったステージ別のセグメントだけでは不十分な場合があります。プロダクトの特性によっては、さらに以下のような軸で切ると深い発見が期待できます。

  • 機能利用頻度(特定機能を週に1回以上使う層/使わない層)
  • 課金状況やプランレベル(無料/有料、Basicプラン/Premiumプランなど)
  • 利用デバイス(スマホメイン/デスクトップメイン)

こういった複数軸をかけ合わせたマトリクスを作ることで、定性インタビュー対象をよりピンポイントに抽出しやすくなります。

行動の“つながり”を把握する

GAやSQLを駆使することで、ユーザーの行動フローやイベントストリームを可視化できます。「特定のボタンをクリック後に、どの画面に進むか」といった微細な流れを追うことで、ユーザーが実際の利用シナリオの中でどこに引っかかっているかを特定可能。
例えば、「ボタンA画面B → 離脱」というパターンを発見したら、「画面Bでどんな不満や躊躇があったのか?」をインタビューで深掘りすれば良いわけです。
SQLで1ユーザーのidのみをとってきて、datetimeでeventを並べて時系列の個別ログを見るのも、仮説生成をするために超おすすめ。

アクションの先読み:予測モデルの活用(want)

一部の分析ツールでは、機械学習モデルを内蔵しており、「この操作のあとに離脱確率が高いユーザーを予測」する機能があります。まだ離脱していないけれども、離脱リスクが高いユーザーを早期にリストアップしてインタビューをすることで、離脱防止のための優先施策を先回りで考えられます。
これらの予測モデルを使ってインタビュー対象を抽出する企業は徐々に増えており、B2B領域のSaaSなどでも「ハイリスク顧客をいち早くフォローアップして要望を聞き出す」取り組みが常態化しています。
ただし、このステップよりもオフィスを出た方が良いのでこれはwantレベル。


ユーザーインタビューで深い洞察を得る

ユーザーインタビューの側も「ざっくり聞く」からの脱却が必要。定量データを活かすための手法としては、以下のようなステップアップがあります。

仮説明確化:ログ分析から生まれた問いを軸に

インタビュー前には、「ログ分析で見つかったシグナル」や「今回検証したい仮説」を必ず言語化しておきます。
例えば、

  • ステップ3で発生する離脱の理由は何なのか?」
  • 週1回以上のユーザーが使っているコア機能は実際にどう評価されているか?」

など、あらかじめ“焦点”を設定しておくこと。
John W. Creswellが提唱するMixed Methods Researchでも、定量データから出た疑問点を定性で補足し、また定性の結果から新たな定量指標を生み出す循環が推奨されています。

実運用の導線再現:「Replay Interview」

“Replay Interview”をより効果的にするには、以下のポイントを押さえるとよいでしょう。

  • ユーザーが操作していたタイミングに近い環境を再現: 端末やネットワーク環境が大きく変わると印象や動作速度が変わります。可能な限りユーザーが当時使っていたデバイスやブラウザを確認・再現する。
  • 画面共有しつつリアルタイムで操作を促す: 過去ログとセットで、実際に再操作してもらい「今同じ状況だったらどう動く?」を確認する。記憶補完と同時に新たな気づきを得られることが多い。
  • 行動タイムスタンプを都度提示: たとえば「この画面に滞在していた時間が45秒だった」「他のユーザー平均は20秒」などの客観データを示しつつ「なぜここで長く留まった?」と突っ込む。

これらを実践することで、単なる事後の感想ベースではなく、“リアルな行動の再体験”に近いヒアリングが可能になります。
ちなみに、これをいきなりやると気持ち悪がられるので事前の同意はちゃんとやりましょう。

深掘り質問のコツ:感情・欲求・制約を探る

「なぜ」「なぜ」で掘り下げる5 Whys手法はよく使われますが、行動データをもとにしているなら、さらに一歩踏み込んだ視点が有効です。例えば:

  • 感情: そのとき何を感じていましたか?(不安、面倒、ワクワクなど)」
  • 欲求: どんなゴールを達成したくて、これを操作していましたか?」
  • 制約: 操作を続ける/やめる決断に影響した外部要因はありますか?(時間の制約、社内ルールなど)」

単なる「こう思った」という回答だけでなく、その背後にある文脈を整理すると、ログが示すデータに魂が宿ります


実際の運用事例:B2B SaaS×Replay Interview

ここで具体的な事例を紹介します。あるB2B向けSaaS企業では、新規ユーザー向けのオンボーディングフローで高い離脱率に悩んでいました。ログ分析で分かったのは「初回の製品ツアーを最後まで完了しないまま離脱するユーザーが40%」という事実のみ。
そこで、以下の手順を踏んでインタビューを実施。

  1. トップ10のハイリスク新規アカウント(初回導入フェーズで操作ログが途切れている)をピックアップ
  2. 事前にHotjarで記録したユーザーセッションを担当者が精査し、「何分目に、どの画面で留まったか」を目視確認
  3. ユーザーとオンライン会議を設定し、画面共有で録画を再生しながら「このとき何を考えていましたか?」とリアルタイムでヒアリング
  4. すると、複数ユーザーから「ツアーのステップが多すぎる」「1ステップごとに保存できるかわからない」といった共通の不満が判明
  5. さらに「自分の設定作業を後から振り返られるドキュメントが欲しい」という潜在ニーズも発掘

これを受け、オンボーディングのステップを簡略化し、各ステップでのスキップ&保存機能を導入。さらに、ユーザーの初期設定内容をダウンロードできるレポートを提供した結果継続率が向上。
定量データだけでは「離脱率が高いこと」は分かっても「なぜ」を正確には把握できず、対応策も的を射ないままだったでしょう。行動ログのリプレイ×インタビューこそが深い改善に直結した成功事例です。


今日から実践できるアクション

  1. 高度なセグメントを作成する:
    「新規/既存」だけでなく、利用頻度・プラン・デバイスなど複数軸を組み合わせたセグメントリストをまず作ってみましょう。
    さらに、離脱率が高いユーザー群や課金の意欲が高そうなユーザー群など、ログデータから“特徴的な”集団を抽出しておくとインタビュー対象を選びやすくなります。
  2. インタビューガイドの再点検:
    「定量から得た仮説を具体的に問いかける質問」がきちんと織り込まれているか確認。
    例えば「機能Xを使う際に、他サービスと比較したことはありましたか?」など、他プロダクトのログインや操作を類推させる質問も効果的。
  3. Replay Interviewの環境を整備:
    HotjarやFullStoryなどのセッション録画ツールを導入してみる。オンボーディングフローや主要機能の画面遷移を記録し、「どの画面で何秒止まったか」を再生しながら聞けるよう準備。
  4. 生成AIによる要約に挑戦:
    既に溜まっているインタビューログや過去の議事録があれば、生成AIにかけてみましょう。似たパターンのユーザー発言や課題点を自動抽出し、そこから深掘りする形で追加インタビューするのも有効。
  5. 数値レポートとインタビュー所感を1枚にまとめる:
    社内のSlackやNotionなどに、数字と声を同時に参照できるフォーマットを用意。
    「離脱率: 40%」「ユーザーの声: “ステップが多すぎて面倒”」のように並列で示すことで、チームの意思決定スピードが格段に上がります。

Q&A

Q. ログ分析に強いエンジニアやアナリストがいない場合はどうする?
A. ツール自体が高度化しているため、GAやMixpanelであればノンエンジニアでも基本的なイベント設定や分析が可能です。ただし規模が大きくなるとデータ設計や分析スキルが必要なため、外部リソースやデータアナリストをパートタイムで巻き込むのも一案。加えて、Amplitudeの公式ドキュメントなど各ツールのラーニングリソースを活用するとスキルを短期間で底上げできます。
Q. インタビューが甘くなる(ユーザーが本音を話してくれない)ことが多い
A. ログ分析から得た具体的な数字や画面を提示して、質問に根拠をもたせることが有効。“こういう行動をとっていましたよね”と事実を突きつけると、抽象的な回答ではなく本音や詳細な状況を話してもらいやすくなります。

参考情報

  • McKinsey Global Institute (2018). “Analytics comes of age”. Data-driven organizationsのROIに関する調査レポート
  • John W. Creswell (2014). Research Design: Qualitative, Quantitative, and Mixed Methods Approaches. SAGE Publications.
  • Nielsen Norman Group: Articles & Reports on User Experience
  • Hotjar公式サイト: https://www.hotjar.com/
  • FullStory公式サイト: https://www.fullstory.com/
  • Amplitude公式ドキュメント: Amplitude Help Center
  • Barney G. Glaser & Anselm L. Strauss (1967). The Discovery of Grounded Theory. Aldine Publishing Company.

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