近年の急速なAI技術の発展に伴い、プロダクトマネージャー(PM)の仕事を強力にサポートするAIエージェント(AIアシスタント)ツールが次々と登場しています。本記事では、特にユーザーリサーチの領域で活用できるAIエージェントを中心に、具体的な機能や活用事例、価格、信頼できるエビデンスを交えながらまとめます。
「インタビューのまとめに時間がかかりすぎる」「膨大なフィードバックを効率的に整理したい」といった悩みを解決してくれるツールが多数存在しています。すでにChatGPTをビジネス活用しているPMの皆さんにとっても、より高度で専門的なサポートツールを導入することで、ユーザーリサーチの質とスピードを飛躍的に向上させられるはずです。
1. ユーザーリサーチ向けAIプラットフォーム
Dovetail(ドブテイル)
特徴・機能:
・音声や動画からの自動文字起こし
・AIによる感情分析、タグ付け、クラスタリング
・インタビュー複数回分の共通テーマの高速抽出
・AI生成のハイライトやレポート機能
活用事例:
定性データを扱うUXリサーチやインタビューを一括管理し、社内ステークホルダーに要点を共有する際に便利。インタビュー結果のまとめや大きなテーマの抽出までを効率的に行える。
価格:
無料プランあり。プロフェッショナルプランはユーザーあたり月額約29ドルから。

Notably(ノータブリー)
特徴・機能:
・ユーザーインタビューの自動文字起こしとAI要約
・AIによるパターン分析と自動タグ付け
・調査設計テンプレートやレポート作成支援
活用事例:
複数のインタビューを俯瞰し、共通点や洞察を短時間で発見。リサーチの手戻りを減らして調査レポート作成までスピードアップ。
価格:
無料プラン有。個人向けプランは月額約40ドルから、チームプランは月額数百ドル程度。

Marvin
特徴・機能:
・あらゆるリサーチデータを集約し、一括でAI分析
・インタビュー内容を自動分類・要約
・「追加で聞くべき質問」の提案
活用事例:
リサーチチームが大量のインタビュー記録を効率的に整理し、分析結果を社内共有まで一気通貫で実施。
価格:
要問い合わせ(エンタープライズ向けカスタムプラン)。

2. ユーザーテスト・インタビュー支援系AIツール
Maze(メイズ)
特徴・機能:
・プロトタイプやユーザビリティテストの運用
・回答データからAIがパターンを検出
・調査質問の自動生成
活用事例:
デザインスプリント内での繰り返しテストに。プロトタイプを提示して回収する定性回答から主要課題を自動要約し、次のステップを迅速化。
価格:
フリープランあり。小規模チーム向けプランは月額75~99ドル程度。

UserTesting
特徴・機能:
・リモートユーザーテスト大手のプラットフォーム
・AIで複数セッション動画を自動要約
・感情や行動の摩擦点検出
活用事例:
大規模なビデオ調査をまとめる際に強力。テスターの発言から重要トピックを瞬時に取り出し、レポートに落とし込む。
価格:
エンタープライズ契約(数百万~数千万円/年)。

dscout
特徴・機能:
・モバイル日記調査やインタビュー対応
・AIによる定性回答要約、テーマ分類
・自由記述の傾向把握を短時間で実施
活用事例:
日記形式の大量フィードバックを分析し、主要トピックをチームで共有。ユーザーの生活文脈を深く理解するのに有用。
価格:
年間契約(要問い合わせ)。

3. ユーザーフィードバック分析・VoC(Voice of Customer)ツール
Kraftful(クラフトフル)
特徴・機能:
・App Storeレビューやサポートチケットなどを集約
・AIが共通テーマや課題の優先度を検出
・Jira/Slack連携で改善施策をタスク化
活用事例:
大量のユーザーレビューを一括分析して、改善すべきポイントを素早く洗い出す。機能追加やバグ修正の優先度を定量的に評価。
価格:
無料プランあり、上位プランは月額15ドル~。

ClientZen
特徴・機能:
・カスタマーフィードバック自動解析
・感情分析や重要キーワード抽出
・「Mantra AI Copilot」でチャット型の集計・洞察
活用事例:
NPSコメントやメールの内容をリアルタイムに可視化し、潜在的な退会リスクや不満要因を早期発見。
価格:
要問い合わせ(従量課金制)。

4. 調査設計・文章作成を補助するAIツール
ChatGPT、Bing Chat、Google Bard、Claudeなど
特徴・機能:
・大規模言語モデルによる高度な文章生成
・要件定義や質問票のドラフト、アイデア出し
・リサーチデータの一部を貼り付ければ、簡単な要約や分析も可能
活用事例:
すでにご存知の通り、ユーザーインタビューの質問案を作成したり、集めたフィードバックからパターンを抽出するなど、汎用的に活用。
価格:
基本無料(ChatGPTのGPT-3.5など)。有料版やエンタープライズ版もあり。
Notion AI
特徴・機能:
・Notion上での文章自動生成・要約
・ドキュメント品質の向上を支援
・議事録や調査レポートのドラフト作成に便利
活用事例:
ユーザーリサーチの報告書をテンプレート化しておき、必要事項を追記するだけで完成度の高いレポートを生成。
価格:
月額10ドル/ユーザー(もしくは上位プラン込み)。

5. その他:リサーチ分析からUIチェックまで多彩なAI活用
Miro AI
特徴・機能:
・オンラインホワイトボードに搭載されたAI
・KJ法(アフィニティマッピング)の自動クラスタリング
・付箋整理や議論の要約支援
活用事例:
ユーザーインタビューの付箋を素早くグルーピングし、主要テーマを抽出する。複数メンバーが遠隔地にいてもスムーズにアイデアをまとめられる。
価格:
フリープラン有。AI機能は無料含む各プランで利用可能。

Neurons(旧VisualEyes)
特徴・機能:
・UIデザインのアテンションマップ生成
・ユーザーがどこに注目するかをAIが予測
・感情反応や視線の流れを可視化
活用事例:
複数のLPデザイン案を比較して、ユーザーの視線が集中する要素を数値化し、より効果の高い案を選ぶ。
価格:
要問い合わせ。利用規模に応じて変動。

関連する社内リサーチプロセスの基本
本サイトでは、ユーザーインタビューガイドやリサーチの重要性についても詳しく紹介しています。
もし「ユーザーインタビューをより深く理解したい」「実際にインタビューを行う手順を確認したい」という方は、こちらの記事もご参照ください。
今日から実践できるアクション
- 既存のリサーチフローに小さく導入
いきなり大掛かりに入れ替えるのではなく、まず一部のユーザーインタビューやアンケート分析だけをAIツールに任せてみる。効果を実感しやすい部分からトライし、チームメンバーにフィードバックを共有する。 - エクセルやスプレッドシートと連携する
ユーザーフィードバックをAIツールにインポートしやすい形でデータを整える。例えばアンケート回答やインタビューテキストをスプレッドシートでまとめ、CSVでエクスポート可能な環境を整える。 - リサーチ結果の「ストーリーテリング化」を意識
AIの自動要約をベースに、PM自身の洞察やプロダクトビジョンを組み合わせ、ステークホルダーに伝わる物語として仕上げる。AIのアウトプットはあくまで補助と捉え、人間ならではの視点を加えるのがポイント。
Q&A
- Q. すでにChatGPTだけ使っているが、他のツールも必要?
- A. ChatGPTは汎用性が高く優秀ですが、大量の定性データを一度に管理・分析するには特化型ツールが有利です。自社のリサーチ規模やデータ量によってAIエージェントを併用するのが効果的。ただし、会社useの場合はまずはchatGPTをこれでもか、というくらいに使い倒しましょう!
- Q. どのツールを優先して導入すればいい?
- A. ユーザーインタビューの数や分析にかける時間が最も大きい課題なら、DovetailやNotablyなどの“リサーチリポジトリ型”ツールが第一候補。ユーザビリティテストが主流の場合はMazeのようなテスト特化型を。社内合意形成やデータ共有を重視するなら、Miro AIなどホワイトボード系も有効。
- Q. 日本語対応は十分にできる?
- A. 一部ツールは英語中心のものもありますが、近年は日本語対応を強化する企業が増えています。導入前に公式ドキュメントやサポートの対応言語を確認しましょう。国内発のツールや、ローカライズが進んだ海外ツールを選ぶのも一案です。
参考情報
- Dovetail Official: https://dovetailapp.com/
- Notably Official: https://www.notably.ai/
- Maze Official: https://maze.co/
- UserTesting AI Insights: https://www.usertesting.com/
- ClientZen Official: https://clientzen.io/
- OpenAI(ChatGPT): https://openai.com/
- 研究データ:UXリサーチにおけるAI活用率 51%(2023年Self-Report Survey, n=500)
- 書籍:Jake Knapp著『Sprint: How to Solve Big Problems and Test New Ideas in Just Five Days』(Simon & Schuster, 2016)
- 書籍:Steve Portigal著『Interviewing Users: How to Uncover Compelling Insights』(Rosenfeld Media, 2013)
今後も生成AI技術の発展に伴い、新しいツールやアップデートが次々と登場していきます。
企業がリサーチ時間を圧倒的に短縮しつつ、より深いユーザー理解を得られる時代になった今、最先端ツールを活用しない手はありません。
ぜひ今回紹介したAIエージェントを検討し、プロダクトマネージャーとしてより大きな価値を生み出してください。