PdMが「事業解像度」を高めて戦略レベルを一段上げる質問リスト

キャリア

この記事の要約

  • “事業”を多面的に理解できるPdMとそうでないPdMの差
  • 市場・財務・顧客・成長レバーの4領域に絞った質問リスト
  • 最後にまとめ表で整理

PdMはプロダクトの専門家ですが、事業そのものを理解しきれていなければ的外れなプロダクトを作ってしまいます。

本記事では「事業解像度を上げる」というテーマで①市場、②財務、③顧客、④成長レバー—の4領域について”自分の事業解像度”をチェックするための質問リストを整理しました。


事業解像度の業務影響とは?

事業解像度が高い高いPdMは、「市場×顧客×財務」の三拍子で意思決定できます。一方、低いPdMは機能要件に閉じがちで、戦略レベルの議論で説得力を欠く。下表は実務でありがちな差分です。

シーン 解像度が高いPdM 解像度が低いPdM
新機能企画 「CACを◯%下げ、ARRが△%伸びる」まで言語化 「ユーザーが便利だから」止まり
経営報告 市場CAGR・競合投資額を示し投資判断を支援 機能進捗とUI改善率だけ説明
チーム優先度調整 財務インパクト×工数で客観比較 声の大きい部署に引きずられる

「結局、売上やユニットエコノミクスにどう効くのか?」を語れないと、PdMは単なる“機能企画者”で終わってしまいますよね(自戒の念)。


市場・競合を掘る質問

  • Q1: 主要セグメントの市場規模は?CAGRは?—その数値ソースは?
  • Q2: 直近1年で最も資金調達した競合は?何に投資している?
  • Q3: 新規参入障壁は何か?(規制/ネットワーク効果/資本力)
  • Q4: 市場の勝敗ポイントは価格?UX?ブランド?どの順で変化しそう?

競合調査は「競合分析の質を徹底的に上げるポイント」も参考に。

プロダクトの競合分析の質を徹底的に上げるために抑えておくべきポイント
競合分析を行う際、単純に比較表を作成するだけでは、真の差別化戦略にはつながりません。なぜなら、ユーザーは単なる機能比較や価格比較だけで意思決定をしているわけではないからです。機能表や価格表で負けているから市場で勝てない――とは限らないケース...

財務・収益モデルを掘る質問

  • Q1: 主な収益ドライバーは何か?(ARPU/ACV/広告単価など)
  • Q2: CAC(顧客獲得コスト)とLTVの比率は?目標レンジは?
  • Q3: Gross Marginを最も圧迫するコスト項目は何か?
  • Q4: 3年後の損益分岐点は?要因シミュレーション済み?

顧客・ユーザーベースを掘る質問

  • Q1: 売上トップ20%顧客の共通属性は?(業種・従業員規模など)
  • Q2: 解約ユーザーが最初に抱いた不満は何か?いつ発生?
  • Q3: 顧客が抱える“裏タスク”は?代替手段は何を使っている?
  • Q4: 徹底的なロイヤルユーザー調査をいつ実施した?結果は反映済み?

ロイヤルユーザー深掘りは 「ロイヤルユーザーを深掘りし、プロダクトグロースを加速する」に詳しく書いています。売上上位層のインサイトを知ると、アップセル設計が変わる可能性大。

「ロイヤルユーザー」を深掘りし、プロダクトグロースを加速する - ログ×インタビュー×戦略の三位一体アプローチ
既存のユーザーが一定数いるプロダクトであれば、必ず「ロイヤルユーザー(ヘビーユーザー、パワーユーザー)」が存在しますよね。ライトユーザーとは異なる“熱量”を持ち、日常的にサービスを使い込む彼らの行動を可視化し、深いインサイトを得ることは大き...

成長レバーを掘る質問

  • Q1: 直近1年で最も伸びた指標は?因果関係の仮説は?
  • Q2: PLG(Product-Led Growth)でスケールする余地は?ボトルネックは?
  • Q3: 価格弾力性は計測済み?コンジョイント分析やバニラ調査の結果は?
  • Q4: A/Bテストで直接収益に寄与した改善は?効果サイズは?

価格検証は「PMがプライシングをリードして、プロダクト価値を最大化する」の記事でも触れています。成長レバーを数値で語れると経営層と言語が合います。

PdMが知るべき“価格設定” - バニラ調査とコンジョイント分析で適切な価格を導き出す
なぜ価格設定リサーチが重要か?プロダクトの価格をどう決めるかは、PdMにとって大きなテーマ。売上や利益率への直結度も高く、下手をするとユーザー離れやブランドイメージの毀損につながりかねません。一方で、マーケティング部門や経営層に丸投げになり...

チェック結果をアクションに落とし込む

上記質問について不明な点についてまずは社内資料を漁ってみましょう。それでもわからん!なら以下のようなことをしてみてください。

  • 不明点が財務ならCFO/経営企画にヒアリング
  • 市場ならアナリストレポート
  • 顧客ならユーザーインタビュー
ユーザーインタビューの目的・設計・やり方・分析まで完全ガイド
テック企業でプロダクトマネージャーをしているクロと申します。私はマーケ出身で博報堂、リクルート、toCスタートアップなどで累計700人以上にユーザーインタビューを実施してきました。本記事では、ユーザーインタビューの目的・設計・実施・分析の一...

僕自身もまだまだな部分が多いですが、一緒に頑張っていきましょう!


チェック項目のまとめ表

領域 主要チェック質問例 答えられない時の次アクション
市場 市場規模 / CAGR / 新規参入障壁 / 競合投資額 アナリストレポート、競合IR資料をリサーチ
財務 収益ドライバー / CAC・LTV / Gross Margin要因 経営企画・CFOにヒアリング、P/L再確認
顧客 売上トップ顧客属性 / 解約理由 / 裏タスク CSログ解析、ロイヤルユーザーインタビュー
成長レバー 伸びた指標 / PLG余地 / 価格弾力性 / 勝ち筋A/B結果 データ分析チームとダッシュボードを作成

今日から実践できるアクション

  1. 質問シートを作成:本記事の表をそのままNotionに貼り、○△×セルフ診断
  2. “×”領域ごとに最速ルートを決める:経営層MTG、アナリストレポート購読など
  3. 月次レビュー:進捗をチームで共有し、解像度スコアを可視化

Q&A

Q1: 数字が苦手で財務質問に答えられません…
A1: まずは売上公式(単価×契約数)と固定費・変動費の区分だけでも押さえましょう。そこにCACとLTVを加えると、意思決定で迷いにくくなります。

Q2: 市場データが公開されていないニッチ領域の場合は?
A2: 競合IR資料・業界団体レポート・求人サイトの募集数など、代替指標で成長性を推測できます。定性+定量を組み合わせて精度を上げてください。


参考情報

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