この記事の要約
- ユーザーインタビュー“ついやりがち”なNG質問を57件まとめ、改善例も紹介
- 質問設計の原則とニュアンス調整のコツを、カテゴリ別に分かりやすく解説
なぜ「質問力」がPdMキャリアの土台になるのか
ユーザーインタビューは、PdMが顧客視点を磨くいちばんの近道です。
しかし、質問がズレていると貴重な時間が台無しになります。僕も新人時代は「便利ですよね?」と聞いて撃沈…など意味のない質問をしていました。
『The Mom Test』でも、“質問次第で真実は簡単に歪む”と釘を刺されています。
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そこで本記事では、ジュニアPdMが最短で「地雷」を避けられるよう、NG質問と改善例を57セット公開します。質問項目大全の補完版として活用してください。

ユーザーインタビューの質問項目大全:今日から使える具体質問例と定石
ユーザーインタビューはPMにとって必須アクション。ただ、「どんな質問をすればいいのか」「本音を引き出すにはどうすればいいのか」など、迷うポイントは多いはず。本記事では、『起業の科学』やFoundXのノウハウ、The Mom Testなどの知...
NG質問57連発と改善例 ― ケース別に一挙公開
NG→GOODの対比を見れば、どこを直せば良いか一目瞭然です。7カテゴリに分けて提示します。
カテゴリ | NG質問 | 改善例 |
---|---|---|
①誘導型 (思い込みを押し付け) |
この新機能って便利ですよね? | どの場面で役立つと感じましたか? |
UIは分かりやすかったですよね? | 最初に見たとき、どこで迷いましたか? | |
価格は高くないですよね? | 価格についてどう感じましたか? | |
通知って多いとウザいですよね? | 通知が届いたときの気持ちを教えてください | |
このワークフローなら効率化できますよね? | 実際の業務フローと比べてどうでしたか? | |
今の設定のままで十分ですよね? | 設定を変えたい瞬間はありましたか? | |
検索バーの位置は完璧ですよね? | 検索を使うとき、最初にどこを探しましたか? | |
すぐ慣れましたよね? | 慣れるまでに要した時間を教えてください | |
②Yes/No誘導 | この機能、使いますか? | 最後に使った類似サービスは何でしたか? |
再購入しますか? | 再購入を決める条件は何ですか? | |
問題ありませんでしたか? | 困ったことが起きた瞬間を思い出せますか? | |
理解できましたか? | 理解を妨げたポイントはありましたか? | |
満足しましたか? | 満足度を10点満点で表すと? 理由は? | |
導入したいですか? | 導入を決める際に上司へ説明するポイントは? | |
③二重質問 (質問が1つに絞られていない) |
料金とサポート面で不満はありますか? | まず料金面の不満は? 次にサポート面の不満は? |
購入理由と利用シーンを教えてください | 購入理由は? 利用シーンは? |
|
UXとUI、どっちが良かったですか? | アプリの見た目を1画面ずつ振り返って思ったことを教えてください アプリの利用の流れについて振り返って感想を教えてください |
|
使いやすさと見た目、どちらを重視しますか? | アプリを選ぶとき、過去を振り返って選ぶ基準を教えてください | |
リスクとメリット、どう感じますか? | サービス導入に際してリスクとして気になった点は? サービス導入をするならどの部署の人になんと説明しますか? |
|
成果と課題を教えてください | 今回の成果は? 残った課題は? |
|
④仮説押し付け | ○○機能が足りないせいで離脱しましたか? | 離脱したタイミングと理由を教えてください |
マニュアルを読まずに迷いましたか? | 迷った瞬間に取った行動を聞かせてください | |
ダッシュボードが複雑だったから諦めましたか? | 諦めた場面でどの画面を見ていましたか? | |
料金ページが見つからず困りましたか? | 料金を確認しようとしたとき、どんな手順を? | |
サポートチャットが遅いと感じましたか? | サポートに連絡した経験と、その印象を教えてください | |
スマホ表示の崩れが原因で離脱しましたか? | スマホで閲覧した際に気になった点は? | |
競合と比較して高いから離れましたか? | 競合サービスと比較したときの判断軸は? | |
パフォーマンスが悪いから解約しましたか? | 解約を決めた最終的な要因は? | |
⑤未来予測を要求 | 来年も使っていますか? | 現在スマホに残っている課金ありアプリの共通点は? |
値上げしても契約しますか? | 過去を振り返ると、値上げ時に残るアプリの決め手は何でしたか? | |
リファラルしますか? | 誰に紹介したくなりますか? その理由は? | |
アップセルに興味ありますか? | アップセルで興味が湧く追加価値は? | |
来月頻度が増えますか? | 使用頻度を増やす障壁はどこにありますか? | |
飽きませんか? | 飽きを感じた瞬間を前後の体験も含めて教えてください | |
半年後の課題は何ですか? | 半年間にあなたの仕事である転換点やキーのイベントを教えてください。 | |
⑥評価誘導 | この改善で満足度は上がりましたよね? | 改善前と後で何が変わりましたか? |
サポートの対応は最高でしたか? | サポートで印象に残った点と改善点は? | |
エラーはすぐ解決できましたよね? | 最後に遭遇したエラーと解決までの流れは? | |
ロード時間は速かったですよね? | ロード時間を遅いと感じた場面は? | |
検索精度は十分ですよね? | 検索で期待した結果が表示されなかった例は? | |
新ダッシュボード、見やすいですよね? | 新ダッシュボードで最初に目に入った情報は? | |
バグはもうありませんよね? | 最近遭遇した不具合があれば教えてください | |
操作は直感的ですよね? | 直感的でないと感じた具体操作は? | |
カラーリングは好みですよね? | 配色について良い・悪いと感じた点は? | |
オンボーディングは十分ですよね? | オンボーディングで理解できなかった点はありましたか? | |
アップデートで要望は満たされましたよね? | 他のアプリでやっているけどこのアプリではできないことは? | |
⑦抽象・曖昧 | 全体的にどうでした? | 具体的に良かった点を3つ挙げてください |
何か意見ありますか? | 最後に迷った画面はどこでしたか? | |
改善点あります? | 操作中にxxxと発言していましたね。具体的に教えてください。 | |
お気持ちは? | 購入を決めたときの感情を思い出して教えてください | |
普段どんな感じで使ってます? | 直近1週間で使った回数とシチュエーションは? | |
エンゲージメント高そうですか? | 一日あたり何分使うと理想的ですか? | |
価値あります? | 具体的な業務改善例を1つ教えてください | |
大丈夫ですか? | 困った瞬間をどう乗り越えましたか? | |
直感的にどう思いました? | 最初の5秒で注目した要素は? | |
面白かったです? | 面白いと感じた機能と理由を教えてください | |
好きですか? | お気に入り機能をトップ3で教えてください |
NGを避ける5つの原則
- 事実→感情→深掘りの順序を守る
いきなり感想を聞くと抽象論になりがち。まずは事実を聞き、背景として感情、最後にWhyで掘る。 - 単一質問を徹底
二重質問は脳が混乱します。接続詞「と」「や」「か」を減らし、1クエスチョン1アンサーを徹底。 - 「いつ」「どこで」「誰が」「何を」の具体化
具体例が出ない限り、議論は机上。場所・時間・人物・行動を追うと嘘が混じりにくい。 - 未来予測を避け、過去の行動に焦点
人は未来を正確に語れません。過去の行動を聞いて行動原理を推測する。 - LLMで事前チェック
ChatGPTに「誘導的でないか?」をレビューさせると、漏れを防げる。プロンプト例は後述。
LLMを使った“質問レビュー”ワークフロー
LLMに質問をチェックしてもらうフローです。
- 質問リストをスプレッドシートに整理(列:質問/目的/想定回答など)
- ChatGPTにシートを貼り付け、上記のリストや原則をコピペしてチェックを依頼
- 返ってきたフィードバックをもとに内省し、再度GPTへブラッシュアップ依頼
- 最終リストをインタビューチームでレビュー → 実地
30分程度の会話で質の良い質問リストが出来上がると思います。
今日から実践できるアクション
- 過去の質問票を開き、本記事の57NGリストと照合
- LLMに「NG疑い表現」を洗い出させ、修正案を提案させる
- 実地インタビュー後、録音を聞きながらNGカウント → 来週までにゼロを目指す
Q&A
- Q1:NGを全部覚えきれません…
- A1:原則を覚えましょう。カテゴリごとに1つでも意識すれば十分です。まずは誘導型をゼロに。
- Q2:ユーザーが話してくれない場合は?
- A2:事実&具体例にフォーカスすると口が開きやすいです。「直近で~したとき」を枕詞に。
- Q3:LLMの指摘が的外れなこともあります
- A3:必ず“目的”列を一緒に渡してください。文脈が分かれば精度が上がります。
参考情報
- Rob Fitzpatrick (2013). The Mom Test.
- Steve Portigal (2013). Interviewing Users.
- Nielsen Norman Group (2020). “Leading Questions Can Lead Your Users Astray.”
- Amy Gallo (2019). “The Art of Asking Smarter Questions.” Harvard Business Review.
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