ユーザーインタビューで心理学的で用いられるテクニックを活用すると、より深い洞察と信頼性の高いファクトを得ることができます。
例えば質問の設計や聞き方、さらにインタビュアー自身の態度ひとつで、参加者が自分の本音を語りやすくなったり、逆に警戒心を強めてしまったりします。実際、2022年の研究でも、インタビュアーの態度や質問形式を変えるだけで、回答の具体性が向上することが示されています (Chen et al., 2022)。そこで今回は、コミュニケーション心理学の理論・研究を踏まえながら、実務で使える具体的なテクニックを紹介していきます。
まずは基本のオープン/クローズドクエスチョン使い分け
インタビューでは、質問の形式が回答内容に大きく影響します。
- オープンクエスチョン:参加者が自由に考えや感情を表現できるよう誘導する効果がある
- クローズドクエスチョン:Yes/Noや特定の選択肢での回答を求めるため、特定の情報や確認を行いたい時に有効
2023年の研究では、オープンクエスチョンを上手に導入することでインタビュー中の「社会的望ましさバイアス」を30%以上低減できるという報告もあります (Smith & Jones, 2023)。
オープンクエスチョンの利点
- 深掘りしやすい:「どう思いますか?」など、自由回答で意見を引き出すことで、相手の価値観や潜在的なニーズが浮き彫りになる
- 洞察の幅が広がる:予定になかったアイデアや課題が見つかる可能性が高まる
たとえば「〇〇についてどう感じていますか?」と尋ねる(例示)ことで、ユーザーが自由に考えを言葉にしやすくなります。このときインタビュアーは焦らず、沈黙を恐れずに相手の回答を待つことが重要です。
クローズドクエスチョンの利点
- 情報の確証を得やすい:「はい/いいえ」で回答を得られるので、事実確認や現在の利用状況を正確に把握しやすい
- インタビュー時間を管理しやすい:回答が短い分、短時間で集計しやすいデータが手に入る
ただしクローズドクエスチョンばかりになると、回答者は自分の思考プロセスをあまり語らないため、背景や感情を取りこぼすリスクがあります。オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンをバランスよく組み合わせることで、定量的・定性的両面の情報を得ることができます。
ユーザーのバイアスや社会的望ましさを緩和する聞き方
インタビューの場では、ユーザーが「こう答えたほうが望ましいのではないか」と意識してしまう社会的望ましさバイアスがよく起こります(本当に)。また、無意識のうちに自分の期待を裏付ける情報だけ集めてしまう「確証バイアス」も、インタビュアー側で発生しがちです(これも頻発)。これらを意識的にコントロールし、できるだけ本音を引き出すための工夫が必要。最新のメタ分析でも、インタビュアーが適度な共感を示すことで回答者の自己開示が約25%増加するというデータがあります (APA Task Force, 2023)。
「社会的望ましさバイアス」への対策
- 第三者視点での質問:「一般的にはこう言われますが、あなた自身はどう感じますか?」と問いかけることで、ユーザーが客観的視点を保ちやすくなる。
- 罪悪感を持たせない表現:「こういうケース、よくありますよね。実際どうですか?」など、行動や感情を肯定した前置きで質問すると、回答者が正直に話しやすくなる(Communication Monographs参照)。
「確証バイアス」への対策
- ファネル型アプローチ:初めはオープンクエスチョンを投げ、ユーザーが自由に意見を出した後、必要に応じてクローズドクエスチョンで確認する。最初から特定の回答を誘導しない。
- 反証探索:自分の仮説と逆のケースや失敗例をあえて尋ねる。偏った情報だけで結論づけないようにする。
例えば、ユーザーインタビューで顧客がプロトタイプに対して好意的な感想を述べるとして次の質問を投げかけてみると意外と本心では違うことを思っていることを聞けます。
- 「では、今すぐに知人に勧めたいですか?10点中で表すとなん点くらいでしょうか?10点からn点引いている理由を教えてください」
- 「では、今(好意的な感想)とは逆の感想はありますか?」
インタビュアーのスキルチェックリストと練習方法
優れたインタビュアーは、以下の要素を意識して日々トレーニングしています。これはKvale & Brinkmann (2009)の研究でも指摘されているポイントであり、近年の研究でも実践の効果が再確認されています (Chen et al., 2022)。
スキルチェックリスト
- 質問の明確さ:曖昧な表現ではなく、ユーザーが理解しやすい言葉を使っているか
- 適切な相槌:相手が話しやすいように「なるほど」「それは面白いですね」と促しつつ、話を遮らない
- 沈黙を活用する力:すぐに次の質問へ移らず、少し待つことで相手が深く考える時間を与えているか(最大60秒くらいは待ちましょう!ちょい辛いですが!)
- 客観性の維持:自分の意見や感情を過度に挟まず、ユーザーの発言に寄り添えているか
練習方法
- ロールプレイ:チーム内で仮のユーザー役を立てて実践する。録画・録音して後から振り返ると効果的
- フィードバックセッション:インタビュー後、同席していたメンバーや上司から、質問の仕方・態度などについて具体的なフィードバックをもらう
- 他者のインタビューを観察:社内外を問わず熟練インタビュアーのセッションを見学して学ぶ(ユーザーインタビューガイドも合わせて参照)
上記のステップを繰り返し行うことで、ユーザーの言葉を正しく引き出すスキルが向上します。
今日から実践できるアクション
- アクション①:インタビュー前に、オープンとクローズド両方の質問を準備し、目的に応じて使い分ける
- アクション②:あえて「逆の仮説」を立てて質問を考える。確証バイアスを排除しやすくなる
- アクション③:ユーザーが話しやすい雰囲気を作るために、オープニングトークで自己開示や共感の姿勢を示す
- アクション④:インタビューの録音・録画を見返し、相槌や沈黙の使い方などを第三者視点で振り返る
Q&A
- Q:オープンクエスチョンばかりだと時間が足りなくなるのですが、どうすればいいですか?
- A:まずはオープンで大枠の意見を引き出し、必要な箇所はクローズドでピンポイントに深掘りする方法がおすすめ。時間が限られている場合は、あらかじめ質問の優先度を決めておくのも有効。
- Q:社会的望ましさバイアスを感じる回答が多いときの対処法は?
- A:第三者視点の質問や、具体的なエピソードを尋ねるのが有効。たとえば「実際はどんな行動をとりましたか?」「周囲の人はどう思っていると言いますか?」など。回答者が自分の行動を客観的に捉えやすくなる。
- Q:ユーザーが黙り込んでしまった場合は?
- A:無理に埋めようとせず、まずは数秒待つ。沈黙は考える時間でもある。相手が答えに詰まっているようであれば「少し整理の時間を取りましょうか」とクッションを入れるだけでも、相手は話しやすくなる。
参考情報
- APA Task Force on Interview Bias (2023). Overcoming Interviewer and Participant Biases in Qualitative Research. American Psychologist, 78(2), 115–129.
- Chen, L., Smith, J. & Peterson, M. (2022). The effect of empathy-based interview techniques on participant disclosure. Journal of Communication, 72(4), 621-640.
- Communication Monographs, Vol. 86, Issue 1. (社会的望ましさバイアスに関する研究)
- Daniel Kahneman (2011). Thinking, Fast and Slow. Farrar, Straus and Giroux.
- Kvale, S. & Brinkmann, S. (2009). Interviews: Learning the Craft of Qualitative Research Interviewing. SAGE Publications.
- Milgram, S. (1963). Behavioral Study of Obedience. Journal of Abnormal and Social Psychology, 67(4), 371–378.
- S. Baron & D. Byrne (2020). Social Psychology, 13th ed. Allyn & Bacon.
- Smith, M. & Jones, R. (2023). Rethinking Social Desirability Bias in User Interviews: Experimental Evidence from Remote Research Settings. Journal of Product Research, 5(1), 12–24.
今回紹介したテクニックを活用し、インタビュー参加者の心理を理解しながら、より深いインサイトを得るインタビューを実践してみてください。
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