「特定機能のユーザーへの機能刺さり具合」を可視化するために見るべきデータの切り口

ユーザーリサーチ

ユーザーが実際どんな機能を、どのくらい、どういう場面で使っているのか?

これを正確につかめるかどうかでプロダクトの伸びしろは大きく変わります。でも、ただ利用データを眺めているだけではその機能が「本当にユーザーの課題を解決しているのか」までは見えにくいものですよね。

この記事では、ログ分析を切り口に機能がユーザーにどれほど刺さっているのかを判断するための具体的な指標や見方を紹介します。機能が「当たっているのか」をデータで客観的に把握し、その改善サイクルを回すノウハウが手に入るはずです。

ログ分析で見るべき基本指標

まず、ログから何を拾うべきかを整理します。ここを曖昧にしてしまうと「漠然と数字を追うだけ」で終わりがち。

以下の5点を軸にデータを見るとユーザーがどれほど機能を使い込んでいるかを多面的に捉えることが可能です。

  1. どれくらい使われているか?:利用頻度・回数・滞在時間
  2. どんな人に使われているか?:セグメント別の利用動向
  3. どんなときに使われているか?:ログの時系列推移、利用時間帯
  4. KPIに寄与する機能か?:機能利用とKPIの関連度
  5. どれくらい満足されているか?:NPSや星評価、アンケートデータ

これら5つの視点は、機能がユーザーの課題を解決しているかどうかを測る最初のチェックリストになります。たとえば、ある機能が毎回同じ一部のユーザーにしか使われていないなら「ニッチな要望なのか、もっと展開すべきか」という検討が必要かもしれません。逆に、滞在時間は長いがKPI転換には結びつかない場合、「何かしら追加の導線がいるのでは?」と仮説を立てるきっかけになります。

利用頻度・回数・滞在時間で見る「稼働状況」

最もベーシックなデータが、利用頻度と利用回数。それに加え、滞在時間(またはセッション時間)を見ると、ユーザーが機能にどの程度の“濃度”で向き合っているかがわかります。
たとえばSaaS系のツールで「週1回以上使うユーザーがどのくらいか」という観点は必須。年1の年末調整などを除き、例えば利用回数が月1以下だと熱量が低い可能性が高いですよね。メディア系のアプリなら、1回あたりの滞在時間が長いほど、コンテンツの深堀り度を推測できます。

利用頻度や回数のデータは、「ログ分析→ユーザーインタビューの流れで『本当に解くべき課題』を明確にする」にもある通り、次の定性調査をどこに当てるかを決める指標にもなります。エンゲージメントが高いユーザーへ深く話を聞くか、あえて低いユーザーに課題を確かめに行くか。数字を見て対象を選ぶことで、効率的なユーザーリサーチが可能になります。

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セグ別の利用率で見る「誰が使っているか」

次に注目すべきはセグメント別の利用状況。平均値だけでは見えない利用の偏りやコアユーザー層を知るうえで欠かせません。
たとえば、ユーザーを「企業規模」「役職」「利用プラン」などで切ったときに、

  • 「上位プランユーザーの8割が新機能を活用している」
  • 「フリーユーザーはほとんど使っていない」

といった事実があると、リリース後の訴求ポイントやサポート施策を検討するための有力なヒントになるはずです。
BtoBサービスを例に見ると、アカウント毎に権限(管理者、一般ユーザー)などが細かく分かれるケースが多いですよね。そこをログで追いかけると、

  • 「管理者だけが設定機能を使いこなしている」
  • 「一般ユーザーはメイン機能にしか触れない」

などの実態が浮き彫りになる。こうしたセグ別の違いが大きいほど、機能の使われ方が二極化している可能性も高いです。

海外ではZendesk社がユーザープロファイルと利用データを紐づける仕組みを導入し、特定プラン利用者の新機能アクティベーション率を上げる施策を展開。結果、約2カ月で機能エンゲージメントが1.5倍に伸びた事例があります(Zendesk社 カンファレンス発表 2023)。

利用タイミングを把握する「どんなときに使われているか」

機能の利用タイミングをログの時系列で追うと、ユーザーがどのフローや文脈で利用しているのかが見えてきます。例えば、ECサイトなら購入前の比較検討フェーズで使われる機能か、購入後のサポートフェーズで使われる機能かなど。
時系列の個別ログを見ると、セッション開始から何分後にその機能が呼ばれているか、あるいは1日のうち何時ごろ多いかが分かります。ソーシャルゲームであれば「朝の通勤時間に起動し、通勤到着前にその機能でアイテム交換をしている」などが把握でき、そこからUX改善につながることもあります。
また、利用時間や利用直後の行動を分析するのも有効。チャットサポート機能を提供するサービスで、サポート利用後に解約ページへ行く率が高いなら、サポート体験が不十分かもしれません。逆にサポート後に利用が増えるなら、サポートがポジティブな影響を与えている可能性があります。

KPIに直結する機能を見極める「機能利用とアクション率の相関」

次に、機能がKPIに寄与しているかどうかをデータで確認します。どれだけ利用されていても、ビジネスゴールや製品価値に結びついていないなら「自己満足機能」に終わってしまう。

たとえば、ECサイトでコンバージョン率がKPIなら、「商品比較機能」を利用するユーザーの購入率がどの程度高いかを把握する。その差が大きければ、比較機能をさらに強化する価値があります。あるいはSaaSなら、「無料トライアル利用中に特定の管理機能を触ったユーザーの有料転換率」を計測すると、契約へ導くキラーフォーチャーが見える場合があります。

なお、ある機能がKPIに深く関連していないと判明しても、即刻やめるかどうかは慎重に判断したいところ。使い込みの少ない機能でも一部の重要顧客には必須かもしれません。そこは定性調査と組み合わせて「本当に不要なのか」検証するプロセスが必要です。

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満足度が高い機能かどうか:NPSやレビューとの突合

最後に、NPS(Net Promoter Score)やレビュー評価などの満足度データとログを突合して、「ユーザーが使いこんでいて、かつ満足度が高い機能」を探ると、ユーザーにとっての価値がよりはっきり見えてきます。

最近では、多くのSaaSがアプリ内で星評価や簡易アンケートを取得しています。利用頻度と星評価をクロス集計したときに「毎日使っているが星1」のようなアンビバレントなケースがあれば、改善余地が大きいとわかります。逆に「たまにしか使わないが評価は高い」機能なら、「深く刺さるユースケースは何か?」を再検討する材料になります。

このように満足度データを組み合わせると、単なる利用頻度やKPIの数値だけでは読み取れない「感情面・主観面の評価」が可視化されます。定量×定性の合わせ技を駆使し、本質的にユーザーが嬉しい機能をしっかり育てることが可能になります。

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ログ分析ユースケース別の具体的な見方

ここまで紹介した観点を、実際のシーンやユースケースに分けてもう少し具体的に整理します。どんなフェーズや状況で、どの指標に注目すべきかをざっくりまとめました。

ユースケース 見るべき主な指標 活用の狙い
新機能リリース直後 ・初回利用率
・繰り返し利用率
・NPS変化
新機能の訴求力や離脱の可能性を早期に把握し、チューニングへ
機能リニューアル ・リニューアル後の利用時間
・旧バージョンとの利用増減
改善が成功か失敗かを短期で判断。追加施策に反映
有料契約へのアップセル ・無料ユーザーの機能利用パターン
・有料ユーザーへのコンバージョン率
キラーフォーチャーを強化し、アップセル施策を最適化
解約防止 ・高リスクセグメントの利用頻度激減
・サポート機能の利用状況
早期警戒信号をキャッチし、アラートや
フォローアップを自動化
ペルソナ再定義 ・セグメント別機能使用率
・リピート率
・NPSスコア
実際に活躍しているユーザー像を
再発見し、ペルソナをアップデート

上記のように、データを見る着眼点はプロダクトのフェーズや施策目的によって変わります。大事なのは「どんな意思決定をしたいのか」を明確にして、それに必要なログデータを抽出していく流れです。

ログ分析とユーザーインタビューを組み合わせる価値

重要なこととして、ログ分析だけでは「なぜその行動が起きているのか?」までは深掘りしきれません。データでわかった事象の裏にあるユーザーの思考・感情は、やはり定性情報で補う必要があります。

具体的には、ログ分析で気になる動きが出たユーザーセグメントにインタビューを行い、背景や要望を探るアプローチ。「ログ分析→ユーザーインタビューの流れで、『本当に解くべき課題』を明確にする」にあるように、この“定量→定性”の往復で仮説を迅速に検証可能です。

機能をやみくもに改修する前に、「定量で利用状況を掴む → 定性で原因と意図を探る → 再度定量で効果測定」という反復サイクルを回す。これを組織として定着できれば、ユーザーの“刺さり”を正しく測り、改善に生かす体制が強固になります。

今日から実践できるアクション

  • ログ分析の仮説リストを作る
    機能利用率・セグ別利用・時系列推移・KPI寄与・満足度の5観点で、疑問点や気になる指標を箇条書きにする
  • ダッシュボードを整備
    1日1回は目を通すダッシュボードに、該当機能の利用頻度や転換率などを可視化。Google Data StudioやLooker、Amplitudeなどを活用
  • ハイ/ロー利用ユーザーにインタビュー
    利用頻度が最も高いor低いユーザーを選定し、ログを基に「なぜそう使うのか」を定性で掘り下げ
  • KPI相関をチェック
    各機能の使用状況とKPI(購入率・継続率など)をクロス集計。強い相関が見られる機能を重点施策に設定

Q&A

Q1: ログが大量すぎて分析が追いつきません。優先度の付け方は?
A1: 全機能を同時に見るのは大変です。ビジネスインパクトが高い機能から順にログの深掘りを行うか、導線が不明な機能に絞って調査を開始するとよい。自動化ツールやチャンク分析で手戻りを減らすのも手段
Q2: ログは好調だけどユーザー満足度が低い場合、どうすれば?
A2: ログが示す高利用には“仕方なく使っている”可能性がある。NPSなど主観評価と食い違う場合は、定性調査で不満点を詳細に把握して改善策を立案する。UIが煩雑で仕方なく操作しているケースもある
Q3: KPIに寄与しない機能は、すべて削除するべきでしょうか?
A3: 一概には言えない。「いらない機能がなぜ生まれるのか?」にもあるように、一部の重要ユーザーには必須な場合や将来の機能拡張に繋がる場合もある。定性検証やビジネス戦略との整合を見極めるのが大切

参考情報

  • トラーナ社. 「2025年度 年次レポート」.
  • Heap社. 「カスタマーケース: 自動発見機能の導入によるコンバージョン最適化」, 2024.
  • Zendesk社. 「カンファレンス発表:利用データとプランアップセルの関連性」, 2023.
  • Z社. 「機能利用分析とNPS向上施策の成果」, 2025.
  • AI Focus. 「ログ解析に基づくインタビュー効率化」、2025年調査報告.

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