ゲーミフィケーションをプロダクトに組み込んで「夢中」なファンを生み出す

プロダクト企画

はじめに:なぜゲーミフィケーションが有効か

僕は現在テック企業でのプロダクトマネージャーを務めていますが、実は過去副業でゲーミフィケーション領域の事業も経営していました。

そんな僕が感じるのは、ゲーミフィケーション(Gamification)は、ユーザーの“熱狂”を生み出す強力な戦略であるということです。わかりやすいもので言えば報酬設計やポイント付与ですが、その本質はユーザーが主体的に「次のステップを試してみたい」「このサービスをもっと使いこなしたい」と思える設計にあります。
実際のプロダクト開発でも、達成感や習慣化をうまく利用すれば、BtoB SaaSでもBtoCアプリでもRetention(継続率)やユーザーエンゲージメントを大幅に高められます。

また、心理学的には、自己決定理論(Self-Determination Theory)で言うところの「達成欲求」「自主性」「つながり感」がうまく満たされると、人はゲームに似た集中状態に入りやすいとされています(Ryan & Deci, 2000)。これこそ先ほども述べたゲーミフィケーションの本質。ユーザーが自発的に前進を感じられる設計が重要なのです。

ゲーミフィケーション成功事例と失敗事例

海外のBtoB SaaSでは、たとえば「学習系ソフトウェア」でゲーミフィケーションを徹底し、学習ログに応じてユーザーがレベルアップできる仕組みが導入されています。オンボーディング時に“初心者レベル”から始まり、一定のスキル完了やチュートリアル達成ごとに“称号”が付与される形です。
結果、ユーザーは自分が成長している実感をリアルタイムに得られ、サポートへの問い合わせも減少。実装後のリテンション率が20%以上向上するという大きな成果が報告されています。これはあくまで一例ですが、達成感と学習効果がリンクした好例と言えるでしょう。

一方、失敗事例も数多くあります。例えば、ある国内BtoCアプリのケースでは、当初ポイント制度を導入して新規ユーザー獲得を狙いましたが、結局はユーザーに無意味な作業を強いるだけになってしまいました。ポイントや称号の付与ルールが曖昧なまま運用され、ユーザーから「結局どんな得があるのかわからない」という声が続出。リリース後3ヶ月で機能を廃止したといいます。

形骸化の原因は、ユーザーが感じる“実質的なメリット”を深く考慮していなかったこと。単に「ポイント=嬉しい」と思い込むのではなく、ゲーム内行動へのモチベーションを設計しなければ結果は伴いません。

実践ステップ:設計→試作→検証

ゲーミフィケーションを導入する際は、大まかに「設計」「試作」「検証」の流れが鍵を握ります。まずは設計段階で、どんな行動をユーザーに続けてほしいかを明確に。SaaSならログイン頻度かもしれませんし、BtoCアプリならSNSシェアやアイテム購入数かもしれません。

この、「ユーザーに続けてほしい行動やゴールの設定」が超重要で、ここをてきとうにやると全てのゲーミフィケーション施策が後手に回ります。

次に、報酬設計フィードバック演出を具体化。バッジを与えるのか、レベルアップ制なのか、ランキング形式を採るのか。ユーザーを戸惑わせないため、インターフェースとの整合性が必要なフェーズ。複雑すぎる仕組みは敬遠されがちなので、必要最低限のルールで分かりやすく提示することで、ユーザーのストレスを軽減します。

ここまで作るとテンションが上がると思いますが、、、、、ちょっと待ってください。

ここで一気に本番リリースをせず、試作(プロトタイプ)とA/Bテストを組み合わせることをおすすめします。

  • A/Bテスト:UIや報酬ルールを2パターン用意し、どちらがよりエンゲージメントを上げるか計測
  • ユーザビリティテスト:例えば、「Usability Benchmark」に沿って基本的な使いやすさをチェック
  • ユーザーインタビュー:導入前に「筋の良い仮説」を作る際は、こちらを参考にしてみてください。

ログやインタビューの結果を見ながら、小さく修正を繰り返すと失敗リスクを最小化できます。

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ビジネスインパクトをどう評価するか

ここまで話してきましたが、大事なポイントとして「ゲーミフィケーションはあくまで手段」です。

目的はユーザーの継続利用、売上増加、ブランド価値向上などビジネス全体への貢献なはず。具体的には、以下の指標を追うケースが多いです。

  • Retention(継続率): 1週間後、1ヶ月後のアクティブ率がどれだけ伸びたか
  • アップセル / クロスセル: 有料プランや追加機能への移行率が向上したか
  • ユーザー満足度: NPSやCSATで数値が改善したか

社内で説明する際は、上記の定量ゴールとともにユーザーインタビューの生の声を共有するのが有効。上司や経営層は収益面を最も重視しがちですが、エンゲージメントの向上が長期収益につながることを示すデータをあらかじめ用意すると説得力が増します。
また、成果の可視化にはログ分析の仕組みが必須。ChatGPTでユーザーインタビューの分析を爆速にするなど、生成AIも組み合わせればレポーティング効率を上げることも可能です。

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今日から実践できるアクション

  • 1. ユーザー行動を洗い出す: 自分のプロダクトで「継続利用につながる行動」「収益へ直結する行動」をピックアップする
  • 2. 小さな報酬設計を考える: ポイントやバッジなど、ユーザーがすぐ達成感を得られる仕組みを試作
  • 3. 小規模ユーザーテストを行う: A/Bテストやユーザビリティテストを使い、反応を定量・定性両面で確認する
  • 4. フィードバックをプロダクトロードマップに反映: 社内合意形成には、インタビュー結果の見せ方などが有効
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自社プロダクトでの小さな実験を積み上げるだけでも、ゲーミフィケーションの手応えをつかめます。副業でゲーミフィケーション事業を経営している僕としては、まず“ゲーム要素”がユーザーを追い立てるのではなく、自発的に楽しむための仕掛けになっているかが重要だと感じています。

Q&A

Q1. ゲーミフィケーションはどんなプロダクトでも有効?
A. 基本的にはユーザー行動を促したいあらゆるプロダクトで検討可能です。ただし金融や法務など、ミスが許されない領域ではユーザーの認知負担とのバランスをよく考慮する必要があります。

Q2. BtoBのSaaSで本当にゲーミフィケーションが効くのか心配です。
A. BtoBでも、社員のスキルアップや導入初期のオンボーディングにおいて、高い効果が認められています。導入意欲やチーム内のモチベーションを引き上げる設計にフォーカスすると良いです。

Q3. ユーザーが一時的に盛り上がるだけで、長続きしないリスクは?
A. ゲーミフィケーションが形骸化する典型パターンです。初期導入後の仕組み運用や報酬拡張、さらなるインタラクション設計を継続的に行い、変化を与え続けることが大切です。

参考情報

明日から、小さな試作でも取り入れてみてはいかがでしょうか。あなたのプロダクトに“夢中”なファンを増やすチャンスです。

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