ユーザーインタビューを行う際の「リクルーティング・ユーザー集め」について解説します。「どんなターゲットに、どのように声をかければよいかわからない…」と困る声をよく耳にするので本記事では、具体的な募集チャネルの比較・テンプレ事例・そして成功/失敗談を共有し、読んだその日から実践できる状態を目指します。
ユーザーインタビューと対象者リクルーティングの関係
正しい対象者を集められないと、インタビューから十分な成果が得られません。サンプルの偏りは、インタビューの誤解や仮説が検証しきれないなどの結果につながりがち。
僕自身、これまで600名超のインタビューを行う中で、「誰に聞くかが成果を左右する」という実感があります。特に、以下の観点が重要。
- エヴァンジェリストユーザーを見極める(サービスに強い興味や課題を持つ層)
- 競合サービス利用者を含めて、他社との比較情報を得る
- 1セグメントあたり最低5名程度を目安にインタビューする(細分化されたペルソナごとに5名ずつ)
- 1タームで2セグメント以上に同時に検証し、セグメント間の比較をできるようにする
- ex)20代前半のビジネスパーソンと、10代後半の大学生のセグそれぞれ3-5人を同時
これらの基礎知識はユーザーインタビューの始め方と具体的手順でも触れていますが、本記事ではリクルーティングに特化して深堀りします。
募集チャネルの比較表:SNS / リクルーティングサービス / 自社顧客 等
ユーザーインタビューの募集チャネルは大きく5つに分類できます。
チャネル | メリット | デメリット |
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SNS(Twitter, Facebookグループ, LinkedIn等) |
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リクルーティングサービス(ユーザーモート,ビザスク,CrowdWorks等) |
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自社ユーザー(顧客データベース) |
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友人・知人(社内・身近な人) |
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特定コミュニティへの参加 |
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いずれのチャネルも一長一短があり、重要なのは「インタビューの目的」と「得たいターゲット属性」に合ったチャネルを選ぶこと。例えば、BtoB向けのSaaSのPMF検証であれば専門リクルーティングサービスを、toCのライト層向けであればSNSの募集が効果的なケースも多いです。
過去の僕がtoCサービスをやっていた時は、友人・知人からの紹介を伝う + コミュニティへの飛び込み + Crowdworksでの募集、を組み合わせていました(それで合計150人くらいにインタビューしています)。
リクルーティングメッセージのテンプレート(謝礼相場など)
次に実際に募集する際の「文面」について、サンプルを示します。短い募集文・長めの募集文、どちらも用意すると便利です。また、謝礼相場はインタビュー30分〜1時間で1,500〜5,000円程度が多いです。ただしBtoB向け専門分野であればそれ以上なる場合がも。
● 短い募集文(SNS用)
【ユーザーインタビューご協力のお願い】
HRテックサービスを開発中です。実際の◯◯に悩む方・興味がある方のお話を伺いたいです。
●対象:◯◯経験のある方
●場所:オンライン(ZOOM)
●所要時間:30分~1時間
●謝礼:Amazonギフト券 2,000円
興味がある方はDMください!よろしくお願いします。
ポイントは、「対象者の条件」を明確に書くことと、時間・謝礼を明示すること。DMやフォームで連絡をもらう流れにするのが定番です。
● 長めの募集文(リクルーティングサービス/メール用)
件名:【インタビュー協力のお願い】◯◯に悩む方を探しています
◯◯サービスを提供している株式会社◯◯の◯◯と申します。
現在、「◯◯の課題を解決する新しいHRテックツール」を企画中で、
実際に◯◯業務で課題をお持ちの方の声を伺いたく、インタビューのご協力をお願いしております。
【インタビュー詳細】
・所要時間:30~45分
・場所:オンライン(Zoom)
・謝礼:3,000円分のAmazonギフト券
・条件:◯◯経験がある方(例:半年以上の利用実績など)
具体的には、◯◯に関する普段の悩み・作業フローや、もし理想の◯◯があったら?など、
直近で実際に行っている作業内容や背景を伺わせていただきます。
ご興味がある方は、下記フォームよりご応募ください。(URL)
あるいはメールで直接ご連絡いただけますと幸いです。
何卒よろしくお願いいたします。
ここではなるべく「対象者条件」「インタビュー内容」「謝礼」「所要時間」を丁寧に書くことで、応募ハードルを下げます。また、個人情報の取り扱い(プライバシーポリシーなど)を追記するのも安心感につながります[1]。
対象者選定の失敗談&成功談
● 失敗談:属性が偏りすぎてインタビュー結果が使えなかった
私がtoCサービスをやっていた頃、楽なのでCrowdworksで集めていたら「Crowdworksを使っている」という少しITリテラシー高いバイアスがかかり、実態以上にアプリ操作がスムーズにいってしまったケースがありました。
つまり、ITに弱い層に対してのヒアリングができなかったんです。そのせいでインタビューよりもデータで見る数字が悪く、そこから友人知人からの紹介やコミュニティに参加したりもしました。
教訓:1つのチャネルに依存せず、複数手段で幅広い属性をカバーせよ
● 成功談:エヴァンジェリストを見つけたことでPMFが加速
逆に、ローンチ前のFIgmaレベルのプロトタイプに対して」高い興味を持ってくれた「エヴァンジェリストユーザー」を見つけられたのは大成功でした。そのかたは1ヶ月間隔で話をさせてくれて、なんと翌月のインタビュー時にはwordで感想な改善点を書いてきてくれるという熱量(本当にありがたかった)。
これを再現するなら、既存顧客にはなってしまいますが、最も利用頻度が高い上位5-20%の方にインタビューを依頼してみましょう。それを、利用頻度が低い層と同時に検証して差分を見ることで、自社プロダクトの何がユーザーの熱量を生んでいるか?を理解できるはずです。
教訓:利用頻度が高い5-20%と利用頻度が低い層で同時に検証せよ
今日から実践できるアクション
- どのチャネルを使うか決める
SNSのみ、リクルーティングサービス、自社顧客など、少なくとも2チャネル以上併用を検討する。 - 募集文のテンプレを用意
1) Twitterなどの短文用、2) メール・フォーム用の長文テンプレを作り、対象者条件や謝礼をわかりやすく記載。 - ターゲット属性を絞り込み
「◯◯に悩んでいる人」「直近3ヶ月で◯◯を使用した人」など、具体的な条件を設定。幅が広すぎると分析も大変になる。 - 5名×セグメントを目安に
ニールセンの研究によると1セグメントあたり約5名で85%のユーザビリティ課題を発見できる[2]。課題発見の効率が上がるので、まずは1セグメント5名を集めるのを目標に。 - エヴァンジェリストユーザーを狙う
既存ユーザーの中で熱量の高い層を抽出し、さらにSNSやリクルーティングサービスで別属性を補完するとバランスが取れる。
Q&A
Q1. インタビュー対象者は何人くらい集めればいいですか?
A. ユーザビリティ的な課題発見なら1セグメント5人が目安で、複数セグメントがあればその数×5人を目標にしてください。また課題発見やソリューション検証の段階に応じて、追加でインタビューを行うことも大切です[2]。
Q2. 友人・知人ばかりだと客観性が失われそうで不安です…
A. たしかに身近な知人だと忖度や社交辞令が入る恐れがあります。初期のプロトタイプ検証としては悪くありませんが、後々はリクルーティングサービスやSNSなど、より客観的かつ幅広い層を巻き込むのが望ましいです。また、1人目は友人知人でもそこから紹介して、また次の方にも紹介してもらって、とやっていくと人数が集まるのでおすすめです。
Q3. 謝礼がないと人は集まらないですか?
A. 無償募集でも集まることはありますが、集まりやすさと継続性を考慮すると1,000~3,000円程度の謝礼を設定したほうが応募率が上がります。BtoB専門分野では5,000円以上のケースもあり、相場は業界やインタビュー時間によって変動します[3]。
参考情報
- [1] Ellis, S. (2017). Hacking Growth. Crown Business. (ユーザーインタビューのリクルーティングに関するノウハウ)
- [2] Nielsen, J. (1993). Usability Engineering. Morgan Kaufmann. (5人テスト理論として有名)
- [3] FoundX. (2020). スタートアップ向け「顧客インタビュー」のおすすめ記事一覧. https://resource.foundx.jp/interview/