QFT(Question Formulation Technique)で質の良いリサーチクエスチョンを作る

ユーザーリサーチ

この記事の要約

  • QFTの5ステップ(QFocus設定〜調査設計)を、実務フローとテンプレート付きで解説
  • 「チェックアウトUIが古い」という課題を例に、爆発的に質問を生み出し収束させるライブケースを再現
  • LLM活用・ファシリテーションTips・失敗パターンを紹介

QFTとは何か ―― “質問をデザインする”

リサーチの成否はリサーチクエスチョン(RQ)の質でほぼ決まりますが、「はい!今から良い質問を考えて」と言われても、即座に出てこないのが現実。

そこで登場するのがQFT(Question Formulation Technique)
米国Right Question Instituteが教育現場向けに開発し、ビジネスリサーチにも転用されている質問生成プロセスです。最大の特徴は、ブレストの熱量とロジカルシンキングの厳密さを一つのタイムボックスに閉じ込めた点。作図ツールや高度な統計知識がなくても、チームで優れたRQを量産できます。

問いづくりの教育実践-The Question Formulation Technique(QFT)を活用して- | TOPICS | 敬愛大学(千葉市稲毛区)
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QFTの全体フローを俯瞰する

公式ガイドラインを実務向けに再編すると、次の5ステップ。

  1. QFocus設定 ― 着火点の明確化
  2. 質問の大量生成 ― 発散フェーズ
  3. 質問の改良 ― オープン/クローズ変換
  4. 優先順位付け ― 3軸評価でスコアリング
  5. 調査設計 ― RQ→メトリクス→手法に展開

この構造を頭に入れておけば、どのフェーズで議論が滞っているかを瞬時に可視化できます。

ステップ① QFocusを立てる――インサイトの“種”を抽出

QFTはQFocus(課題の焦点となるフレーズ)がスタート地点。今回は「チェックアウトページが古すぎる」をQFocusに設定しました。社内の行動ログやユーザーインタビューで浮上した以下の“シグナル”が根拠です。

  • CVRが昨年比−12%(GA4計測)
  • カスタマーサポートにUIの分かりづらさを指摘するメールが週20件

ここでは「原因」を決め打ちにしないことがポイント。PdMの経験則が強く働くと、後工程の発散を殺してしまいます。コンテクスト徹底深掘りの記事で紹介した“Why Ladder”も併用し、課題の抽象度をチューニングすると精度が上がります。

ステップ② 爆発的に質問を生む発散フェーズ

制限時間15分、ルールはたった3つ。

  1. 批判禁止 ― アイデアの質より量
  2. 疑問詞自由 ― 5W1Hだけに縛られない
  3. 可視化必須 ― MiroやFigJamで即共有

平均で35〜50個の質問を出すのがおすすめ。コツは語尾を揃えること。例)「なぜ〜か?」でハードルが下がり、勢いで量産できます。

ステップ③ 質問を“鋭く”研ぐ――オープン/クローズ変換

ここではオープン質問(Why/How)クローズ質問(Yes/Noで答えられる)を相互変換し、問いの解像度を調整します。最新研究(Harvard Ed School, 2024)では、この変換作業が質問の明確性スコアを平均27%改善すると報告されています。

例:
Before「ボタンの文言は古いのか?」→ After「ユーザーはボタン文言をどのように解釈しているか?」

ChatGPTに「#全質問 オープン⇄クローズ変換して」と指示すれば、手作業の3分の1以下の時間で完了できます。

ステップ④ 優先順位付け:Use/Business/Expertの3軸評価

評価軸 質問例 スコア(1〜5)
Use(ユーザーユースケース寄与度) 「購入完了率を深堀りするデザイン要因は?」 5
Business(事業インパクト) 「返品率に影響するUI要因は?」 4
Expert(実行可能性/技術・リソース) 「AMP対応が可能か?」 3

合計スコアで上位5問を次フェーズへ。評価の根拠をSlack上で残しておくと、後で方針がぶれても議論が早いです。優先度付けのフレームは筋の良い仮説設定の記事とセットで活用できます。

ステップ⑤ 調査設計へ落とし込む

トップRQを「メトリクス→手法→リクルート条件」に展開します。

RQ: 「チェックアウトの入力フィールド順序は完了率にどう影響するか?」
└ KPI: セッション完了率
└ 手法: A/Bテスト + ヒートマップ
└ リクルート: 月1回以上購入ユーザー30名

A/Bテストの設計に迷ったらA/Bテスト実践ガイドの要約記事を参照すると効率的です。

LLM×QFT:質問生成を自動化

例えば、chatGPTなどを使って以下のプロンプトで質問を即時に大量生成できます。
「あなたはシニアUXリサーチャーです。QFocus=◯◯。考えられる調査質問を50個、日本語で列挙して。」
LLMが出したリストを、人間が評価→変換→優先度付け、という流れです。これだけで発散フェーズが10→3分に短縮します。

“良いリサーチクエスチョン”の評価指標

最後にチェックしたい3基準は以下の通り。

  1. 明確性 ― 誰が読んでも同じ解釈
  2. 検証可能性 ― 実データでYes/No or 数値で答えられる
  3. 行動示唆度 ― 結果がプロダクト施策に直結

3点満点で自己採点し、合計7点以上を合格ラインあたりがちゃんと評価するなら妥当なライン。


今日から実践できるアクション

  • 今週のスプリントレビューでQFocusを1つ設定し、15分の質問ブレストを試す
  • Miroに「オープン⇄クローズ変換」テンプレートを作り、全メンバーに共有
  • トップ3 RQをユーザーインタビュー完全ガイドのフローに当て込み、調査計画を作成

Q&A

Q. B2B SaaSで専門用語が多すぎる場合、QFocusはどう設定する?
A. 「専門用語→ユーザー語訳」を先に行い、顧客が実際に発話した言葉を使うと発散が活性化します。
Q. オンラインだけでQFTは回せる?
A. 可能です。MiroやGoogle Sheetで可視化し、Zoomのブレイクアウトルームを使えば対面と遜色ありません。

参考情報

  • Rothstein, D., & Santana, L. (2014). Make Just One Change. Harvard Education Press.
  • Harvard Graduate School of Education. “Question Improvement Metrics”, 2024.
  • Right Question Institute. “The QFT Guide”, 2023.
  • O’Keeffe, J. “The Impact of Question Transformation on Critical Thinking”, Journal of Applied Research, 2022.
  • Case Study資料: 自社D2Cサイト改善スライド(社内共有、2024)

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