先輩/リーダーは、この時代にどうやって後輩/メンバーに”チャーム”を示すか?

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この記事の要約

  • 完璧なライフスタイルを送るリーダーは孤独になりやすく、かつての”酒・タバコ”などの”隙”があるリーダーの方が愛される心理メカニズム(プラットフォール効果)が存在する
  • 健康的な生活を維持しながらチャームを作るには、失敗談の戦略的共有、趣味のオタク性活用、自己開示の技術など7つの具体的戦略が有効
  • チャームは仕事の成果があってこそ成立するもので、「厳しいけど温かい」バランスを保ちながら、メンバーとの心理的距離を縮めることが重要

朝5時起床、ランニング、筋トレ、瞑想、読書、家族サービス。そんな完璧な先輩/リーダーってどうでしょうか?一見すると理想的なリーダー像ですが、なぜかメンバーとの間に見えない壁ができてしまうイメージもまた湧くのではないでしょうか?

一方で、仕事はできるけど飲み会では豪快に酔っ払い、タバコ休憩で雑談し、時には失敗談を笑い話にできるリーダーは、なぜか愛される。この差は一体何なのでしょうか。

なぜ「隙」がある上司ほど愛されるのか?心理学が明かすチャームの正体

まず、チャーム(charm)(人を惹きつける魅力や愛嬌)について考えてみましょう。

心理学の研究では、「プラットフォール効果」(完璧な人が小さな失敗をすると、かえって好感度が上がる現象)が知られています。1966年にエリオット・アロンソンが行った実験では、クイズで高得点を取った人がコーヒーをこぼすという失敗をした場合、失敗しなかった場合よりも魅力度が高く評価されました。

ミスや失敗をしても好感度が上がる!?『プラットフォール効果』 - 株式会社SBSマーケティング
有能な人が起こすミスや失敗は、かえって好感度を上げる『プラットフォール効果』。生じるメリットや活用例、活用する際の注意点などについて解説しています。

これをビジネスの現場に当てはめると、仕事ができる上司が飲み会で酔っ払ったり、タバコ休憩で愚痴をこぼしたりする姿は、まさにこのプラットフォール効果を生み出しているんです。メンバーは「ああ、この人も人間なんだ」と安心し、親近感を覚える。

僕自身の経験でも、最も慕われていたリーダーは、仕事では厳格でありながら、オフの時間には人間味のある一面を見せる人でした。完璧ではない姿を見せることで、チームメンバーとの心理的距離が縮まっていたのです。

「完璧すぎる上司」が生む心理的距離の問題

では、朝5時起床、ランニング、筋トレ、読書、瞑想、家族サービス完璧おじさんの何が問題なのか。それは「近寄りがたさ」という心理的な壁を作ってしまうことです。

Googleが実施したProject Aristotleという研究プロジェクトでは、チームの生産性を最も左右する要因は「心理的安全性」(チームメンバーが安心して意見を言える環境)であることが明らかになりました。完璧すぎるリーダーの前では、メンバーは自分の弱みや失敗を見せることができず、結果として心理的安全性が低下する、という因果があるのではないでしょうか?(推測です)

様々な書籍でも語られているように、多くの成功したリーダーが自身の弱点や課題について率直に語ることで、チームとの信頼関係を築いています。完璧を装わず、適度な「隙」を見せることが、かえってチームの結束力を高めるのです。

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酒・タバコ・遊びに頼らずチャームを作る7つの戦略

とはいえ、健康的なライフスタイルを犠牲にして酒やタバコに頼るのは本末転倒です。では、どうすればいいのか。ここからは、健康的なライフスタイルを維持しながらチャームを作り出す具体的な方法を紹介します。

1. 「失敗談」を戦略的に共有する

完璧に見える人ほど、過去の失敗談を意図的に共有すべきです。ただし、ポイントは「学びに変換された失敗談」を選ぶこと。

例えばチームミーティングで「先週、ユーザーインタビューで完全に間違った仮説を立てていた」という話をするなど。具体的には、「この機能は絶対に必要だと思い込んでいたけど、実際に聞いてみたら誰も求めていなかった」といった内容です。これにより、メンバーも「仮説が外れることは普通のこと」と感じ、積極的に仮説検証に取り組むようになる、などの効果が期待できます。

2. 趣味の「オタク性」を武器にする

酒やタバコの代わりに、何か一つ「普通じゃないくらい詳しい趣味」を持つことはどうでしょうか?それは鉄道でも、アニメでも、盆栽でも構いません。重要なのは「仕事の顔とは違う一面」を見せることです。

例えば、「健康」の趣味でも、

  • 論文を30本以上読み
  • 書籍を30冊以上よみ
  • 何ならyoutubeでも発信しちゃって

とかまでいくと、「なんだこの人、やば笑」となって笑いのタネになるものです。

実際、多くの成功したリーダーが、仕事以外の情熱を持っています。これらの趣味について語る時の人間らしい姿が、メンバーとの距離を縮める重要な要素となっています。

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3. 「ソロプレイヤー」から「チームプレイヤー」への転換を見せる

健康的な朝活をしている人は、往々にして「ソロプレイヤー」として見られがち。これを打破するには、チーム活動への積極的な参加が効果的です。

たとえば、「今度の休日、希望者でランニングしませんか?」と誘ってみる。ただし、朝5時集合ではなく、普通の人が参加できる時間帯に設定することが重要(笑)。
(僕は早起きがクッソ苦手なので、以前は6:30にカフェに集合して1分でも遅刻したらスタバを奢るゲームを友人としていました)

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4. 雑談における「自己開示の技術」を磨く

自己開示(self-disclosure)(自分の個人的な情報や感情を他者に伝えること)は、人間関係構築の基本です。しかし、完璧主義者は往々にして自己開示が苦手。

心理学者のアーサー・アロンらが1997年に発表した研究では、段階的な自己開示が親密性を高めることが示されています。まずは軽い話題(好きな食べ物、週末の過ごし方)から始め、徐々に深い話題(将来の不安、過去の挫折)へと移行していく。

具体的なテクニックとして、「実は…」で始まる話を1日1つは入れてみてください。「実は、プレゼンの前はいまだに緊張で手が震えるんです」といった、ちょっとした弱みの開示が効果的です。

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5. ユーモアを「学習」して実装する

ユーモアは生まれつきの才能ではなく、学習可能なスキルです。ビジネスにおけるユーモアの重要性は、多くの研究で指摘されています。

ただし、無理に面白いことを言う必要はありません。「自虐ネタ」「タイミングの良い相槌」だけでも十分。たとえば、難しい技術の話の後に「僕も最初は全然わからなくて、3回くらいChatGPTに聞きました」と言うだけで、場が和みます。

6. 「弱さ」を戦略的にデザインする

完璧な人が意図的に作る「弱さ」は、チャームの源泉になります。ただし、仕事の本質に関わらない部分で弱さを見せることが重要です。

例:

  • 「コーヒーがないと朝動けない」(カフェイン依存という小さな弱さ)
  • 「スプレッドシートの関数、いまだに検索しながら使ってます」(完璧ではない一面)
  • 「子供の宿題、最近難しくて教えられない」(家庭での苦労)

これらの「害のない弱さ」は、人間味を演出し、メンバーとの距離を縮めます。

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7. 「1on1」を雑談から始める文化を作る

多くのシゴデキリーダーは、1on1を効率的に進めようとして、いきなり本題に入りがちです。しかし、最初の5分を雑談に使うことで、心理的安全性は大きく向上します。

心理的安全性に関する詳しい解説はこちらの記事でも触れていますが、雑談は単なる時間の無駄ではなく、信頼関係構築の重要な投資です。

PMにとって「心理的安全性」は高速実験を可能にする土台、という話
プロダクトチームの運営において、よく耳にするのが「心理的安全性」という言葉。心理的安全性は、アメリカのハーバード大学教授であるエイミー・エドモンドソン氏が提唱した概念で、「集団の中でお互いが安心して発言し、失敗や批判を恐れずに学習と改善を続...

リーダーの「チャーム度」を測る5つの指標

自分にチャームがあるかどうか、どうやって判断すればいいのでしょうか。以下の5つの指標でチェックしてみてください(大いに自戒の念を込めて..)。

  1. メンバーからの相談頻度:仕事以外の相談も含めて、メンバーが気軽に話しかけてくるか
  2. 雑談の発生率:ミーティング前後に自然な雑談が生まれているか
  3. 笑いの頻度:チームミーティングで笑いが起きる回数
  4. フィードバックの質:メンバーから建設的な批判や改善提案が出てくるか
  5. 離職率:チームメンバーの定着率

チャームと成果の両立:バランスの取り方

また重要なことは、チャームを意識しすぎて本来の「仕事ができる」という軸を失わないことです。チャームは成果の上に成り立つものであり、成果なきチャームはただの「いい人」で終わってしまいます。

理想的なバランスは、仕事では厳しく要求するが、人間としては温かいという状態。これを実現するために、以下の原則を守ることが重要です。

  • 成果に対しては妥協しない
  • フィードバックは具体的かつ建設的に
  • 失敗を責めるのではなく、学びに変える
  • メンバーの成長を本気で願う
  • 自分の弱さも適度に見せる

ネガティブフィードバックの効果的な活用方法についても、別記事で詳しく解説していますが、厳しさと優しさのバランスこそが、真のリーダーシップの鍵となります。

PdMの“ネガティブフィードバック”活用 ー ネガティブを引き出し活用する
プロダクト開発をしていると、つい自分やチームの士気を上げるためにポジティブなコメントや褒め言葉に目がいきがち。ただ、ユーザーから寄せられるネガティブフィードバック(クレームや不満)こそが、プロダクトの本質的な課題を浮き彫りにし、強力な改善ア...

今日から実践できるアクション

  1. 明日の朝会で失敗談を1つ共有する:先週の小さな失敗と、そこから得た学びを3分で話してみましょう
  2. 1on1の最初5分を雑談タイムにする:「最近ハマっていること」など、軽い話題から始める
  3. 月1回の「ゆるい」チーム活動を企画:ランチ会、オンラインゲーム大会など、参加が苦にならない活動を提案
  4. 自分の「推し」を公開する:アニメ、アイドル、スポーツチームなど、意外な一面を見せる

Q&A

Q1: チャームを意識しすぎて、なめられることはないですか?
A: その心配は理解できます。重要なのは「仕事の成果」という土台があることです。まず成果を出し、その上でチャームを加えることで、「できる人なのに親しみやすい」という最強の組み合わせが生まれます。順番を間違えないことが大切です。

Q2: 自己開示が苦手な性格なのですが、どうすればいいですか?
A: 無理に大きな自己開示をする必要はありません。まずは「好きな食べ物」「週末の過ごし方」といった軽い話題から始めてください。また、相手の話を聞いて「実は私も…」と共感を示すところから始めるのも効果的です。

Q3: リモートワーク中心の環境でチャームを作るには?
A: オンラインでは意図的な演出が必要です。ビデオ会議の背景に趣味のものを映す、Slackのステータスに今の気分を書く、絵文字リアクションを積極的に使うなど、小さな工夫の積み重ねが大切です。また、オンライン雑談会やバーチャルランチなど、業務外の接点を意図的に作ることも効果的です。

Q4: 部下との距離感の取り方が難しいです。近すぎても遠すぎてもダメな気がして…
A: 適切な距離感は相手によって異なります。まずは観察から始めてください。メンバーが雑談を好むタイプか、仕事に集中したいタイプかを見極め、それぞれに合わせた接し方を調整します。ただし、最低限の人間的な温かさは全員に示すことが重要です。

Q5: 完璧主義をやめられません。弱さを見せることに抵抗があります。
A: 完璧主義自体は悪いことではありません。問題は、それが他者との壁を作ることです。まずは「仕事以外の部分」で小さな弱さを見せることから始めてみてください。たとえば、「料理が苦手」「方向音痴」など、仕事のパフォーマンスに直接関係ない部分から開示していくと、抵抗感が少なくなります。

参考情報

  • Aronson, E. (1966). “The effect of a pratfall on increasing interpersonal attractiveness.” Psychonomic Science, 4(6), 227-228.
  • Aron, A., Melinat, E., Aron, E. N., Vallone, R. D., & Bator, R. J. (1997). “The experimental generation of interpersonal closeness: A procedure and some preliminary findings.” Personality and Social Psychology Bulletin, 23(4), 363-377.
  • Edmondson, A. (1999). “Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams.” Administrative Science Quarterly, 44(2), 350-383.
  • Google re:Work – Project Aristotleに関する研究成果

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