プロダクトの指標が増えすぎたなら、思い切って削ろう

プロダクト推進

この記事の要約

  • 指標が“増えすぎた”兆候判断する8項目
  • North-Star Metric(NSM)を起点にKeep/Revise/Archive

なぜKPIは増殖するのか

  • 新機能のリリース
  • 部門横断レポート
  • OKRの乱立

──PdMの周りでは、いつの間にか指標が雪だるま式に増えていきます。

そして、以下のようなコストが蓄積します。

  • 意思決定遅延:会議ごとに“この施策ではどの数字が正か”から議論が始まる
  • 責任境界の曖昧化:Owner 不在の指標が増え、改善アクションが宙に浮く
  • ダッシュボード過積載:重要な変化がノイズに埋もれ、異常検知が遅れる
  • モチベーション低下:チームが「結局何を伸ばせば良いのか?」と迷子になる

増殖シグナル診断リスト

まずは現状把握。以下8項目のうち3つ以上に該当すれば、「一旦指標を見直そうかな」と考えるライン。

  1. 同一意思決定を説明する指標が3つ以上存在する
  2. 週次会議で触れられない指標がダッシュボードの30%を超える
  3. Owner が明文化されていない指標が10%以上
  4. スプリント内で改善アクションが発生しない指標がある
  5. スキーマ変更のたびに SQL 修正が頻発し、データチームが疲弊
  6. Slack 通知が多すぎてアラートをミュートするメンバーがいる
  7. 同じ数字を marketing BIproduct BI で参照し矛盾する
  8. 指標定義ドキュメントが半年以上アップデートされていない

リセット前に押さえる3原則

荒療治に走る前に、チームで次の原則を合意します。

  • Customer Value First:ユーザー価値を直接表す数字だけが“一軍”
  • Decision-Oriented:意思決定に紐付かない指標は持たない
  • One Owner, One Metric:指標ごとに単一の責任者を設定

North-Star Metric再設定ワークショップ

NSM の再定義は1日集中ワークショップで完了させる、など集中して行うのが良いです。

  1. 事前:顧客体験バリューチェーンをホワイトボードで可視化
  2. 90分:各タッチポイントで“価値生成→受取”を数式化
  3. 90分:候補指標を Impact × Actionability で評価
  4. 120分:投票→決定→Owner 指名

たとえば Airbnb は「宿泊予約泊数」を NSM とし、ゲストとホスト双方の価値を一気に捉えています。

North-Star Metric(NSM)がしっくりこない時に基本の価値方程式を見直す
「プロダクトの主要指標としてNorth-Star Metric(NSM)を設定してはいるものの、“なんかしっくりこない”」――そう感じたことのあるPdMやマーケの方は意外と多いはずです。この記事では、そうした悩みを抱える方向けに、下記のポイ...

補助指標の棚卸し:Keep/Revise/Archive

全指標を以下3軸でスコアリングし、スプレッドシートで自動色分けすると一目瞭然です。

説明 重み
影響度 NSM への相関係数 ×2
可動度 チームが3週以内に変化させられるか ×1
信頼性 計測ロジックとデータ欠損率 ×1

合計スコアが6点未満Archive とし、Looker ビューを凍結。SQL はコメントアウトして“復活希望時はPRで相談”と明記します。

ダッシュボード・スリム化のUI/UX戦略

ニールセン・ノーマン・グループは“一画面で意思決定を促す『アットアグランス』設計”を提唱しています。

具体的なレイアウト

  • 階層:ファーストビューに NSM、その下に補助指標を 3-4 枚タイル配置
  • 視線誘導:背景は #FFFFFF、NSM のみ#0b5394で強調(このあたりは差分がわかればなんでも)
  • グラフ種別:比較→縦棒、推移→折線、構成→積み上げ横棒で統一

Spider Strategies も “Keep dashboards simple and uncluttered” と推奨し、不要ビジュアル削減を最優先に挙げます。

まとめ:指標を極限まで少なく、シャープに

最後に、重要ポイントを羅列します

  1. NSMは常に一つ
  2. 補助指標は三つの役割(ディープ、リスク、効率)まで
  3. Ownerと改善サイクルをセットで定義
  4. アラートは優先度 高/中 の二段階
  5. ダッシュボードは一画面完結
  6. 月次レビューで“増殖”をチェック
  7. 意思決定に使われない指標は翌月削除
  8. 定義書を更新しない指標は削除候補
  9. 数字より顧客価値。迷ったらユーザーインタビューへ戻る

今日から実践できるアクション

  • 本日中にダッシュボードの未参照指標比率を算出しよう
  • 今週のチーム定例で“NSM再設定ワークショップ”開催を提案
  • Looker Studio にデータ欠損アラートを追加し、Ownerをタグ付け

Q&A

Q. 指標を消すことに抵抗する上司をどう説得する?
A. 「意思決定に使われない指標はコスト」という事実を可視化します。週次会議の発言ログを分析し、参照回数ゼロの指標一覧を示すと納得感が高まります。

Q. NSMが二軸になりそうなときは?
A. まずユーザー価値と事業価値のどちらを最優先するかを経営と握ります。二軸で妥協すると再び増殖の温床になるため、“補助指標で補完”が原則。

Q. ガバナンス運用の負荷が心配
A. フォーム記入→自動Slack通知のIFTTTで申請フローを自動化すれば、運用コストは月1時間以内に収まります。

参考情報

  • HBR “Don’t Let Metrics Undermine Your Business”:contentReference[oaicite:8]{index=8}
  • HDI “How to Avoid Metrics Overload”:contentReference[oaicite:9]{index=9}
  • Teknicks “Airbnb’s North Star Metric”:contentReference[oaicite:10]{index=10}
  • Growth Academy “North Star Metric Examples”:contentReference[oaicite:11]{index=11}
  • NN/g “Dashboards: Making Charts and Graphs Easier to Understand”:contentReference[oaicite:12]{index=12}
  • Spider Strategies “Keep Dashboards Simple and Uncluttered”:contentReference[oaicite:13]{index=13}
  • PwC 調査引用(Fanruan Blog):contentReference[oaicite:14]{index=14}
  • Mark Bridges “20 Case Studies on KPI Strategy & Management”:contentReference[oaicite:15]{index=15}

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